円谷英二

川本三郎「映画監督ベスト101 日本篇」を読んでいて、やはり日本映画はヘンですばらしいと思った。
とかくハリウッド映画と比べて「暗く」「ダサイ」と言われがちな日本映画であるが、実はよく見るとハリウッドなどには見られない破天荒な作品がごろごろしているのだ。
 コメディ映画乱作の杉江敏男植木等シリーズでおなじみの古澤憲吾、任侠・ギャング・カルトが似合う石井輝男、怪獣映画の代名詞、本多猪四郎などなど、現代の体裁だけやけにおしゃれな映画にはない荒っぽい魅力を溢れんばかりに持っていた。
 ストーリーも登場人物もとにかく無茶苦茶なのだが、なぜか見たあと、忘れられない印象を残す。今の日本映画にそれを求めるのは少し酷かも知れない。今の映画は監督のものではなくて、スポンサーのものになって、ただのマーケティングの結果にしかすぎない。
 そんな状況だからこそ、やりたいことがストレートに伝わってくる「ゼブラーマン」のような映画が受けているのかもしれない。皆、マーケティングには飽き飽きしているのだ。

私の遺伝子に刻まれている日本映画といえば、黒沢でも小津でもなく、やはり円谷英二である。円谷は特撮監督でありながら、いつもクレジットは作品監督と同等の一枚クレジットで登場するほどリスペクトされた存在だった。今のアニメや特撮の源流はすべてこの人にある言っても過言ではない。
円谷英二の映像世界」(実業之日本社)を読んでいると、彼の神様ぶりがとことん堪能できる。
ウルトラマンゴジラ以外の戦争ものや怪奇ものなどの作品はいまではなかなかお目にかかることが難しいが、そうした作品の中にもひとつひとつ挑戦が隠されていて、特撮の技術と世界観を丹念につくりあげていった軌跡に敬服する。

カルトで名高い「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」を先日、これまたカルトで有名な浅草東宝オールナイトで見たのだが、その内容の無茶苦茶ぶりと特撮の大胆さに絶句し、これはきちんとその系譜を追う必要があると感じた次第だ。
彼の遺作は大阪万博・三菱未来館の映像展示「日本の自然と日本人の夢」であった。三菱未来館は当時人気パビリオンのひとつで、あまりの混雑で見ることはできなかったのだが、今、この映像はどうなっているのだろうか。彼の描いた「日本人の夢」をぜひもう一度見たいものだ。

たこぶつ
いわしのつみれ
上善如水