竹町奇譚

marudonguri2004-03-12

 会社からの帰路、ふと思い立ち、松浦寿輝「あやめ」に登場する界隈に行ってみる。

 千代田線の湯島で降り、風俗店やキャバが林立するエリアを抜け、上野広小路風月堂前に出る。既に死んでいる主人公はここでコーヒーを飲んだあと、自分が生まれ育った竹町へと足を進める。
 小説の文章の通り、喧噪盛んなアメ横を横目に見つつ、山手線のガードをくぐり、昭和通り沿いの仲御徒町の交差点にたどり着く。
 信号向かいのディスカウントショップ多慶屋は既に店じまいを始めていた。その脇道を進むと、主人公が賭博をした後、金を奪われそうになった御徒町公園が闇の中から現れる。このへんから先は街灯が寂しく光っているだけで、人の気配がしない。

 妙な既視感に襲われながら、勘を頼りに主人公の生家の方面に進む。南に数区画進んだところで、なんとも寂れた商店街らしき一画に出る。末広商店街の文字が街灯の明かりにぼんやり浮かんでいる。
 その路地の先にうっすらと薬局の看板が確認でき、ここがまさにまぼろしのあやめが咲き乱れていた地点であることを確信する。
 文中に出てきた内山理容店は既に無く真新しいコンクリ住宅になっている。主人公の生家の隣の浅野薬局はそのまま存在、二軒隣の安藤鰹節店も確認できた。生家向かいには菓子店と記されていたが、それらしき店は見あたらず。既に廃業か。
 肝心の生家は、ガレージと化していた(写真)。
 主人公はここに5階建てビルの幻を見て、その3階の幼なじみの女がやっているバー「あやめ」に入っていくのだ。
 角の酒屋だけがまだ店を開けており、暇そうな主人が文庫本を繰っているのがみえる。まさか自分の家の並びが小説の舞台になっているとは夢にも思わないだろう。



 あまりそこに長い時間いると、なにかに取り憑かれそうな気分なので、早々に踵を返す。
 東に少し歩くと、見覚えのあるアーケードが見える。昔、この佐竹商店街にアミーガというパソコンを買いに来たことがある。マニアックなオヤジが細々とやっていた店で、その頃もうらぶれた商店街だったが、今もそのたたずまいは変わっていない。さっき感じた既視感はこの商店街のせいだったのだろう。
 アミーガショップはとっくの昔に潰れたが、その母屋の1階のカステラ屋は健在のようだった。流行に左右されないものは強いということか。



各地でロリ事件頻発。中でも殺人を起こした犯人が絵に描いたようなロリヲタであるため、安易なロリ批判に結びつけられる恐れがあると思われる。まあマスコミはそういうものを叩くことでケリをつけたい単細胞集団なのは毎度のことであるが。



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