春の夜

 小林秀雄に言わせると、ソメイヨシノは手入れが簡単なことから、明治政府と植木屋が結託して日本中に広めた下卑た桜らしい。葉が出てから花が咲く山桜こそが本当の桜だという。
 しかしそんなことはおかまいなく、近所の隅田公園も上野も花見客でいっぱいである。



 ふと思い出して、「蕪村句集」の桜の句を拾い読む。
 「犬ざくらよしの内裏の似せ勅使」
 「剛力はただに見過ごす山ざくら」
 花見をする余裕のあるうちはまだましってことですな。



 蕪村はこころが落ち着いていいなあ。せわしない心のリハビリは蕪村と犬散歩。
 「春の夜や宵あけぼののその中に」
 糞なデビルレイズでも見ながらの夜も春だから許せる。



 「色も香もうしろ姿や弥生尽」
 今週木曜は早くも四月。



筍御膳
いかたこ刺身
久保田 万寿