レトロな時代

 科学ドキュメントっぽい番組の制作会議、連日。タイトルVなどのアイデア指向が気付くとレトロに傾いてしまう。いかんなあ。考えれば私の世代は過去の遺産ばかりでメシを食っているようなものである。懐メロばやりの昨今のCM、往年アニメのリメイクなど周りを見てもその傾向は顕著である。
 他の世代は気付かないかもしれないが、あの「トリビアの泉」のナレーター中江真司は私の世代に言わせれば、ミスター仮面ライダーである。「仮面ライダー本郷猛は改造人間である・・」で始まる名調子が「トリビア」を見るたびに蘇るのだ。

 しかしレトロが一番おもしろいというのはやはり危機的状況なのだろうな。10年後、今の時代を振り返られた時はきっと「レトロブーム起こる」などと括られて、なにひとつ新しいものが生まれていないという事態に気付くのだろうか。うーむ、そうは言っても我々にはレトロしかないのだよ・・・残念ながら。


 といいながら、ヤフオクで手に入れた「仮面ライダーV3」のビデオを見る。ライダーマンの最期を確認。やっぱりただの人間なので弱い。V3の足手まといといってもいいほどだ。変身もただヘルメットかぶるだけだしなあ。
 庵野版「キューティハニー」のパンフにも載っていたが、V3の火薬爆発は歴史に残る名爆発だ。聞けば特撮スタッフに菊池さんという爆薬マエストロがいたらしく、ただもわもわと煙ばかり出る爆発ではなく、ズバーンと鋭角的逆三角形に爆発するのが特徴である。さらに凄いのはその大爆発を出演者の至近距離で容赦なく行っていることだ。爆発シーンをよく見ると、デストロンの戦闘員らは互いに身を伏せあって難を逃れているほどだ。スタントの大野剣友会はもっと評価されていいと思う。「プロジェクトX」などにお薦めの涙もののエピソードがごまんとあるに違いない。


 大野剣友会と並んで素晴らしいのは、主題歌作曲の菊池俊輔氏である。「仮面ライダー」シリーズをはじめ、「タイガーマスク」「キャシャーン」「Gメン75」「バロム1」そして「ドラえもん」果ては「暴れん坊将軍」までアニメ主題歌を中心として、きら星の如く忘れ得ぬ名曲を生みだした巨匠である。まさに日本のジョン・ウイリアムスだ。アマゾンで菊池俊輔ベストとかを探したが、似たようなものはあっても既に廃盤だったりして少し寂しい。彼のメロディが広い世代のDNAに刻み込まれているのは間違いないのだが。


 渋谷「秋月」で寿司。
 あえて醤油皿を出さず、すべて仕事をしてある状態で、すっと出る。つい長居をしてしまう。玉子も美味。


 上喜元 にぎりいろいろ