11月は酉の市の季節。今年は3回あった。3回ある年は火事が多いというが、それには裏があるらしい。
 酉の市に出かけるついでに吉原に行く旦那が多かったことから、妻が吉原行きを諫めるためにこうした説を流布したという。
 吉原なんかに行って家を留守にしていると火事になるよということらしい。たぶんこの火事という言葉には本来の意味の他に、妻との諍いや家計が火の車などのさまざまな暗喩的意味も込められているようだ。
 実際、酉の市を行う浅草・鷲神社のすぐ裏は吉原で、今でもついでにひと風呂浴びて帰る人もいそうである。


 そういえば、今月、近い将来に起きるとされる東京直下型地震の被害想定図が発表されたが、都内で最も危険なエリアとされたのが、まさしくこの浅草北部の千束・竜泉あたりなのである。もともと地盤が弱いことと古い木造家屋が密集していることが理由なのだろうが、そこには鷲神社も吉原も入っている。吉原は現在の地名表記では千束四丁目(実に味気ない名前だ)にあたる。
 ひと風呂浴びている時に、折悪しく大地震に遭ってしまう御仁も少なからずいることだろう。人間として一番無防備な状態で都内最大級の揺れ(想定震度7らしい)に遭うのだから、まず無事ではいられないだろう。
 まあ古来から人間の死に方で最上級とされているのは腹上死といわれているから、ある意味幸せな最期かもしれないが。