「夏の流れ」丸山健二

 別に復刊されたから読んだのではない。たまたまそういう気分になって再読したまでだ。だいたい復刊したものには妙な人物のおまけ解説が付いているらしいので嫌なのだ。一方でブログをする者をさんざん批判しておきながら、ブログが一般にも認知されるとすかさず臆面もなく、自らもやり始めるという節操のなさがたまらなく嫌だ。あらゆる覚悟をその身に寄せて生きる丸健文学には少なくとも似合わない気がする。
 再読してみて気がつくのは、デビューから全く変わらない人間へのまっすぐな眼差しだ。それがストレートに文体に現れている。主人公が考えていることは最小限しか読者に与えられない。そこから先は読者が考えることなのだ。今の文学はもしかしたら語り過ぎているのかもしれない。


酔鯨 鶏たたき