快楽亭ブラック毒演会&ほぼ日立川志の輔。


 今年のクリスマスはなぜか落語三昧。まず24日は心筋梗塞から奇跡の復活を遂げた、不死身の借金王、快楽亭ブラックの「毒演会」へ。会場のお江戸日本橋亭周辺はしんと静まりかえり、まるでゴーストタウンのよう。やはりイブの夜は皆、家でまったりしているのか。
 会場入り口ではなんとブラック師匠本人がサンタ姿でお出迎え。スリッパまで揃えていただき恐縮。クリスマスということでプレゼントも多数。私は入院の顛末が赤裸々に綴られているアサヒ芸能の唐沢エッセイのコピーを頂く。
 客は8割の入り。
 しかし開演を待つ客の背後で、出演者本人が黙々と客応対しているのも変な図。それもサンタ姿で(笑)。
 演目は客からのリクエストも入れて四席。「六尺棒」「井戸の茶碗」「川柳の芝浜」「文七ぶっとい」。
 病み上がりとは思えないパワフルな高座であった。それにしても川柳師匠を主人公にした芝浜は最高である。改めて川柳師匠のガーコンを聴きたくなった。聞けば川柳師匠、正月に高輪プリンスに登場するらしい。しかしすごい人選である。やるなあ、高輪プリンス。
 次は30日に浅草木馬亭で年忘れのトンデモ落語会だ。ブラック師匠のほか立川談之助ほか濃ゆいメンバー勢揃いなので今年一年の厄払いにうってつけである。

 続けて翌日25日は「ほぼ日」主催の「続・はじめての落語。立川志の輔ひとり会」に行く。
 昨日のブラック毒演会が落語のダークサイドなら、こちらは日の当たるメインストリームである。文字通り、これは落語を知らない人に落語の楽しさを知ってもらおうという趣旨の会なので、ここはひとりでも多くの初心者のひとに行ってもらいたいとは思うものの、やはり自分もどうしても行きたくてたまらず、申し訳ないがしっかりチケットを入手して行かせてもらった。
 会場途中の暗い小道に立つ道先案内人君(どんなに寒かったことか!ごくろうさん!)も含めて、いつもながらスタッフさんたちの細やかな優しい対応に感銘を受ける。やはり自分に与えられた仕事を嫌々こなしてしているのではなく、なんとかイベントを自分の力で楽しいものにしようとスタッフ一人一人が考えているからだろう。こればっかりは上がガミガミ言っても始まらない。やはりまず、おもしろがる心ありき、なのであろう。
 会場はさじきの真ん中にこたつをしつらえ、途中で糸井氏と志の輔師匠がそこでトークを行う趣向だ。
 開演直前に楽屋で会場を観察する糸井氏や志の輔師匠が、会場モニターに登場し、まずは客いじり。今回の会、昼夜二部構成だったのだが、客の中に昼夜ぶっとおしで参加している強者もいて、驚く。やはり若干マニアも紛れ込んでいるらしい。しかし半分以上の客が今回落語ライブ初体験組。いままで落語に無関心だった層をここまで集客する「ほぼ日」のパワーを改めて実感する。やはり良いイベントは人を動かすのだ。
 まずは、「壺算」。
 昨年の「ほぼ日らくご〜春風亭昇太」も「壺算」だったので、ちょっと意外。もしかすると比べてみてということかもしれない。事実、いくつか値切り方に違いがあり、人それぞれ個性となる聴かせどころを持っているなあと改めて思う。米朝師匠は買い手の利発さを際立て、売り手をケムに巻くというスタイルだが、志の輔師匠は売り手側の困り具合が増幅されていて、ややMっ気を感じるほどだ。昇太師匠のは持ち前の軽やかな口調が生きていて、売り手がひたすらパニックになり、果ては頭のネジが飛ぶようなおもしろさがある。どれが好きかは人それぞれだろう。
 続いて、こたつでトーク。「寝床」を肴に、名人の語りの凄さを分析。
 もっとだらだらトークだと思っていたら、しっかり話が用意されていた。会の最後に、この会への批評はいらないと糸井氏が言っていたが、まあでもこのこたつトークはやっぱりどこか批評というかお勉強であったなあ。自分は落語を批評しても、他人には批評されたくないってことかとも受け取ってしまう。はじめて落語を聞く人に、落語のおもしろさをなんとか伝えたいという気持ちはわかるけど、この師匠の凄さはここをこう聴いて、とレクチャーされてしまうと、やはり次から落語を聴く時は、どこか構えて聴いてしまうような気がする。そういう凄さは、ずっと聴いてりゃ自然とわかってくるもので、あまり人から教わるものではないし・・・。それにそんなもの一生わからなくてもいいよって敢えて言うのがまた落語でもあるのだ。
 二席目は「ディアファミリー」。鹿の頭の剥製がある日宅配されてきて、さあ大変という話。荒唐無稽の中に思わずしんみりどころがある良い噺である。パルコのように、最後に鹿実物登場かとも思ったが、それはさすがに無し。
 この噺もいつかCDで出してもらいたいものだ。
 こたつトークの後に、参加者全員で記念撮影。こうした皆の一体感を促す演出は、さすが、ほぼ日ならでは。
 また来年が楽しみである。(来年はいよいよ鶴瓶師匠か??)