福田和也、終わる。

最近、ラジオばかり聞いている。
ラジオというとアンテナ感度的に聴く場所が難しくて、どうしても億劫だった。
しかし昨年、「TalkMaster」というMP3録音機能の付いたラジオを手に入れてからは状況が変わった。
目についたラジオ番組をこれに片っ端からタイマー録音し、iTuneに入れて聴いているのだ。
もちろんiPodにコピーして持ち歩きもできる。


ラジオを聴いて気付くのは、タレントがラジオとテレビというメディアによって、発言を使い分けていることだ。
タモリ爆笑問題などは、テレビの司会の顔の時には絶対言えないようなきわどい話をしている。
特にオリンピックの最中などはそれが顕著に表れていた。
ラジオはまだ本音が言える、ゆるいメディアなのだ。


それはともかく、この半年くらいで愛着が湧いた番組がいくつかあったのだが、それが軒並み今月で消えてしまう。4月からは野球が始まるからだ。つまり私が聞いていた番組の多くは野球オフシーズン用の雨傘番組だったというわけだ。まあラジオはまだまだ野球中継が命なので仕方がないのだが。
来週でTBSラジオの「談志の遺言2006」が終了。談志ファンとしては、MXTVの「談志の言いたい放題」と並んで、家元の喝が聴ける貴重な番組だったのだが。家元は今や落語界の重鎮という顔の他に、いにしえの映画・芸人・歌謡曲の生き字引としての役割を担っている。今月出た「談志絶唱 昭和の歌謡曲」のオビにも書いてあったが、「談志が書かなきゃ、誰が書く!」である。若者の流行を追って無理矢理今のヨコモジPOPを歌うより、自分の趣味と美学に忠実に頑固一徹に昔のはやり唄だけを口ずさむ老人のほうが圧倒的にきれいだ。

談志絶唱 昭和の歌謡曲談志絶唱 昭和の歌謡曲
立川 談志

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またおとといはニッポン放送「熱血!ラジカルチャー 福田和也」がついに終了。
これは福田和也やさまざまな書店員(個性派が多かった)がおすすめの本を紹介するだけの1時間なのだが、これだけじっくりと読書の話ばかり深く語る番組は他になかった。
最終日は、福田和也自らが、自分を変えた3冊を紹介。福田氏は月に100冊読み、200枚の原稿を書くと豪語しているお人だが、氏曰く、小学校4年の頃には学校の図書館の本をすべて読破していたという。いやはや。


そんな彼の人生を変えた3冊とは次の通り。
獅子文六「大番」
小林信彦「日本の喜劇人」
江藤淳「閉ざされた言語空間」
いいツボついてますね。
今どき獅子文六を出してくるところがにくい。獅子文六といえば、戦後の流行作家の代表格。
しかし今ではほとんどが絶版で読むことができない。
やはりエンタメは所詮、流行ものなのか。むしろ当時はマイナーだったような純文学系の作家のほうが再評価や復刊などされて長く生き残るケースもあるのだから、歴史というのは残酷だ。
今バカ売れしている石田衣良恩田陸東野圭吾なども数十年後は跡形もなく消えているということなのか。


今、消えているといっても獅子文六の作品がつまらないというわけではない。実は今読んでもこのうえなく面白いのだ。
福田氏おすすめの「大番」は株屋ギューちゃんの波瀾万丈の人生の物語。その破天荒な物語にはフランス文化仕込みの究極の美学が隠されているという。
私のお気に入りは、新幹線がまだない時期の特急ちどりの中で繰り広げられる会話劇「七時間半」。
そのテンポと含蓄の効いた会話は、落語やシェイクスピアに並び立つほど、気が利いている。
ちなみにタイトルの「七時間半」は東京から大阪までの特急の所用時間である。

大番〈上〉大番〈上〉
獅子 文六

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ほかにおすすめで気になったのは、「リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間」。
日本では大阪にあり近年東京にも進出するリッツに伝わる接客バイブル「クレド」の秘密を説いたもの。
リッツは何度か利用したが、朝食が最高レベルだった。サービス面は一度ロビーでチェックインを待たされた経験があるのだが、その時の奇妙なホスピタリティが印象的だった。より条件の良い部屋を選んでくれるあまり、なかなかチェックインできないという本末転倒のようなことになったのである。こちらは予約通りの部屋があれば良くて、すぐに部屋に入って次のアクションを準備したかったのだが。こちらの意向を説明してもなかなか自由にさせてくれない頑固なところは、「クレド」の力なのか。

リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間
高野 登

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ほかには「日本の富裕層」。
下流という言葉が流行ったばかりだが、その裏には富裕層というものが確実に形成されている。
この本が売れているということは、それに的を絞った戦略を考えたい人が増えているということだ。

日本の富裕層?お金持ちを「お得意さま」にする方法日本の富裕層?お金持ちを「お得意さま」にする方法
臼井 宥文

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しかしこういう読書番組のようなものは、amazonやAppleITMSなどと連動して制作すれば、結構おもしろい効果に繋がると思うのだが。もっともっと著者や編集者の声を聴きたいと思う。
というか、ラジオも一気にネット配信にならないものか。音楽配信サービスなんてちまちま後追いしなくていいから、単純にまるごとPodcast化してほしいものだ。