嫉妬される志らく。

 志らくのシネマ落語。池袋・新文芸座。先月の銀座・中央会館から志らく続き。
 今月は「ドライビング・ミス・デイジー」。合わせて「百川」「明烏」「手紙不筆」を演ったのだが、それらのネタを随所にはめこんでくるので、すべての演目が繋がっているような感覚になる。
 「塊魂」というゲームがあったが、それと同じく、あらゆる事物を巻き込んでいく。計算ずくとはいえ、見事なものだ。


 帰ると「en-taxi」が届いている。例によって立川談春のエッセイから。できすぎのように、志らくとの思い出が綴られている。その関係は、ずばり、嫉妬。弟弟子として入門してきた志らくだが、家元の受けがよく、談春の焦る気持ちが克明に記されている。相変わらず序破急整った、読ませる内容だ。
 小林信彦の「うらなり」ではないが、読ませる内容だけに、本当のところどうなのか、当の志らくの側に聞いてみたい気がする。


 角川句会の正客は、最近どこにでも顔を出す、茂木健一郎。科学者らしく生硬な句が多いが、半可通な俳句臭さを持ち出さないところが潔い。角川春樹のダイナミックな反転世界に触れ、見違えるほど深さが増していく。こうした出会いがまさに茂木氏の言うところの「セレンディビティ」(偶有性の幸せな出会い)なのだろう。


 涅槃図の中に落ちたる椿かな 春樹




句集 存在と時間句集 存在と時間
角川 春樹


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