marudonguri2004-12-06

「そこでゆっくりと死んでいきたい気持ちをそそる場所」松浦寿輝(新潮社)。
 待望の最新短編集である。しかし近所のリブロにはまだ並んでいなかった。というか他の松浦氏の本も一冊も無い。「半島」「あやめ・鰈・ひかがみ」くらい置いておけよと言いたい。あれだけ様々な媒体で書評されていても、売る現場には響いてこないのだなあ。うーむ。


 さて、今回の作品集。あとがきでも氏自ら告白しているように、短編を書くということはかなり楽しい作業であるらしい。事実、今回の本は中身はもちろん装丁挿画に至るまで、本当に氏の好きなように作ったという感じが出ていて、気持ちよい。
 挿画に至っては、なんと松浦氏自筆のイラストが使われている。なんともかわいい子猫の絵なのだが、しかしその作品「あやとり」を読んで、ぶっとんだ。全く絵にそぐわない怖ろしい話なのだ。そのせいか未だにあの猫の絵が頭から離れない。あの絵がなかったら、全く話の印象も変わっていたことだろう。妙に魅力のある絵なのだ。かなりやばい。


 しかし、この本、客観的にみれば、黒を基調としたまるで葬式のような不吉な外観で、これをジャケ買いする人はファン以外あまりいないように思える。少しは騙しても売るような感じにするのも手だとは思うのだが・・・。